「実果が帰るまで、上がって待ってればいいのに」

申し出はありがたかったけど、せっかちな俺はそれを待たずに家を出た。
彼女の家から一番近いコンビニは歩いて5分程度。
今はその時間さえ惜しかった。

「いた…」

程無くして、コンビニからの帰り道にある公園に、実果の姿を見つけた。

そう言えば実果は、高台にあるその公園から、オレンジ色に染まっていく町並みを眺めるのが好きだったっけ。

駆け寄ろうとしたところで俺はためらった。
隣にタケルの姿があったから。

実果の乗ってるブランコをタケルが強引に揺すって、まるで子供みたいにキャーキャー騒いでる。

タケルと一緒にいる実果を見ると、胸がざわつく。
さっき実果の母親にカウンターパンチを浴びせられたからだろうか。

記憶を取り戻したことをバラバラに伝える手間が省けて好都合なのに、足がすくんで動かない。