恋する手のひら

あのとき、タケルの心の広さと実果への思いが半端ないことを知った。

あの日から俺はずっとタケルに頭が上がらない。

「譲ってやるんだから、絶対に大事にしろよ」

そんな簡単な約束さえ守れなかった俺は。
タケルに、実果から引き離されて当然だった。

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実果の家を訪ねたけれど、あいにく彼女は外出中だった。

「ごめんなさいね。
コンビニに行っただけから、もうすぐ戻ると思うんだけど」

実果の母親は申し訳なさそうに言った後、久しぶりに会う俺の顔を見て、元気そうで良かった、と続けた。

「…秀平くんが目を覚ますまで、実果の落ち込みようったらなかったのよ。
タケルくんが側にいてくれなかったら、あの子の方がどうにかなってたかもしれない」

その言葉が胸を貫く。

実果に必要なのは俺じゃなくてタケルなのだと言われた気分だった。

あの日、事故に遭わなければ。
記憶を失ったりしなければ。

過ぎたことを悔やんでも仕方ないのに、後悔ばかりが浮かんでくる。