恋する手のひら

「実果、聞こえてる?」

聞こえては、いる。
だけど理解ができない。

秀平が車に撥ねられた?
意識不明?
タケルは一体何を言ってるの?

「今どこにいる?
迎えに行くから、一緒に秀平のところ行くぞ」

なんとか駅前の噴水広場にいることを伝えると、タケルは絶対そこから動くなよ、と言い残して通話を切った。
私はケータイを握りしめたまま、立ち尽くした。


それから先のことはほとんど覚えていない。

タケルがどれくらいして駆け付けてくれたのかも。
彼に連れられて、どこの病院に向かったのかも。

だけど、タクシーの中でタケルが私の手を握りながら、大丈夫だ、と何度も言ってくれていたことだけはぼんやりと覚えている。

私たちが病院に着いたとき、秀平の手術はもう始まっていた。