インターハイの地区予選もそろそろ終盤。
中間試験の後はまた部活浸けの毎日だった。

今日の練習が終わり、びっしょりかいた汗を拭っていたとき、体育館の隅に実果を見つけた。

そこは彼女の最近の定位置。
いつも通りタケルを待っているんだろう。

そう言えば、部長のタケルは顧問の佐々本と話があると言って席を外していた。

知ってて無視するのも不親切だから、俺は迷った末に話し掛ける。

「───タケルなら職員室に行ってるよ」

俺がそう告げると、実果はそっか、とぎこちない笑顔を見せた。

またこの顔。
無理するくらいなら、笑ってくれなくていいのに。

ふと、彼女の頭に葉っぱが載っているのに気付いた。

「お前、頭に付いてるよ…」

そう言って手を伸ばした瞬間。

「えっ!何?虫!?
取って!」

悲鳴を上げながら、彼女が俺の腕にしがみついてきた。