恋する手のひら

電車から降りた後も、タケルはなかなか昨日の告白に触れない。

なかったことにしていいのかな。

もし結論を出さなくていいなら、その方が私にとっては楽。
今まで通りでいられるならその方がいい。

敢えて聞かずにいた私に、タケルは家の前で別れるときになってようやく言った。

「昨日の告白…、俺は本気だから」

一瞬にして緊張が走る。

ずっと気になってたくせに、いざ話が始まりそうになると怖じけづくなんて、私ってずるい。

「今すぐ俺を選べとは言わない」

真剣な顔。
タケルがバスケ以外でこんな顔をするところ、今まで見たことなかった。

「お前が秀平を忘れるまで待つから」

タケルの気持ちは素直に嬉しい。
だけど、今まで知らずに傷付けていた彼に、気を持たせるようなことはやっぱり言えない。

私はゆっくり首を振った。