恋する手のひら

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誕生日当日。
気合いを入れて早起きした。

髪は念入りにブローして、お気に入りのワンピースの袖に腕を通す。

唇にリップグロスを塗ろうとして、ふと手を止めた。
あんまりベタついてない方がいいかな、なんて考えて思わず顔が赤くなる。

私ってば、二度目のキスを期待してるみたいじゃん。
(いや、もちろんしてるけど。)

結局、薄めにグロスを載せて家を出た。


待ち合わせの噴水広場に着いてケータイを見ると、時刻は約束のジャスト15分前。

最後にもう一度手鏡で前髪をチェックすると、私は、まるで決勝戦直前のアスリートのように、深呼吸をしながら目を閉じる。

まあ、戦いみたいなもんか。
今日のこれからに、私と秀平がどうなるかが懸かってるんだもん。

昨日、タケルにはメールで全てを報告した。

タケルは昔から私の良き相談相手。
彼女持ちの秀平を好きになったと打ち明けたときも、責めるでもなく、諦めろって言うでもなく、ただ私の気持ちを聞いてくれたっけ。

昨日の返信も、
『良かったね』
の一言。

でもその素っ気なさがタケルらしくて、くすぐったかった。