「あんな大声で話したら、みんなに聞こえちゃうじゃん!」

全く非常識なんだから、と私が苦笑すると、タケルは突然へなへなとその場に座り込んだ。

「タケル?
どうしたの、大丈夫…?」

私が驚いて顔を覗き込むと、タケルは良かった、とつぶやいた。

「え…?」

「もう口もきいてもらえないかと思った」

そのタケルの顔に胸が締め付けられる。
それはこっちのセリフだよ。

「そんな訳ないじゃん…」

今まで通りでいられることにホッとしてるのは、きっとタケルよりも私の方なんだから。

******

いつも通り、タケルと一緒の帰り道。
普通に会話してるつもりでも、やっぱりぎくしゃくしてしまう。

タケルは朝以降ずっと、昨日の告白には触れなかった。

気まずくなるのが嫌だってことは、今まで通り告白はなかったことにしていいのかな。
隣をちらりと見ると、私の視線に気付いたのか、タケルが私を見た。

私は思わず目を逸らしてしまう。

まずっ。
今のはさすがに不自然だったよね。

恐る恐る視線を戻すと、タケルはもうこっちを向いていなかった。