怒られる!
そう思って、反射的に目を閉じた瞬間、

「昨日はごめん!」

タケルが急に目の前で両手を合わせた。

「へっ?」

驚きのあまり、間抜けな声が出てしまった。

タケルは体も声も大きくて目立つから、クラスのほとんどが彼に注目してる。

「タケルー。
お前何やったんだよー」

教室に入るなり私に謝るタケルの様子が面白かったのか、男子たちが野次を飛ばす。

まずい、すっごく注目されてる。
だけどタケルはそんなの気にする様子はみじんもない。

「昨日、すっげー反省した。
あんな勢い任せにしたことで、実果と気まずくなるのは嫌だ」

タケルの言葉は嬉しい。
私だって、このまま気まずいのは嫌だ。
だけど…。

「分かった。
分かったから…」

私はタケルをなだめながら、教室を見回すように促す。

私たちの会話はクラス中に丸聞こえ。
タケルもようやく状況に気付いたのか、慌てて野次を飛ばしてきた男子たちに毒づく。

「お前ら、聞いてんじゃねーよ!」

いや、タケル。
みんなが悪いんじゃない。
タケルの大声が原因だから。

今置かれてる状況が恥ずかしくて、私は慌ててタケルの腕を掴んで廊下に出た。