翌朝、タケルと顔を合わせるのが気まずくて、私は電車の時間を少し早めてしまった。

単なる時間稼ぎに過ぎないのに、学校に着いて、教室の中にタケルがいないのを確認してホッと息をついた。

しばらくして秀平が教室に顔を出す。

「───はよ」

秀平はいつもと変わらない様子でそう言うと、私の後ろの席に座る。

「おっ、おはよう」

思わずどもってしまった自分が情けない。
秀平は昨日のことなんてきっと何とも思ってないのに。

そのとき、廊下からバタバタと大きい足音がしたかと思うと、勢い良く教室の扉が開いた。

───タケルだ。

その様子があまりにも騒がしかったため、クラスの男子が、やっぱりタケルだよー、なんて茶化してる。

だけど当のタケルは、そんなのに目もくれず、私の元にずんずんと進んで来る。

どうしよう。
昨日あのまま逃げ出した上に、今朝も勝手に一人で登校したから、絶対に怒ってる。

タケルは私の机までやってくると、目の前で大きく息を吸い込んだ。