タケルの言葉が胸に突き刺さる。

それが本当なら、私は今までどれだけ無神経なことをしてしまったんだろう。
私の一番側で、タケルはどんな気持ちだったんだろう。

「だけどそれも限界」

タケルはもう一度私を抱きしめる。
さっきよりも強く。

「あいつのことで泣いてばっかいるお前を、黙って見てるなんてできねぇよ」

俺にしろよ、タケルの消え入りそうな声に、私の胸がドクンと大きな音を立てる。

「俺は、実果だけだから」

実果だけ。
そんなセリフ、秀平には絶対言えない。

タケルの気持ちはすごく嬉しい。
タケルがいいやつなのは私が一番よく知っているし、今まで何度も助けられた。

だけど、欲しいのはこの腕じゃない。
今も心を占めているのは秀平なの。

「ごめん…」

タケルを押し退けようとしたところで私は息を飲んだ。

だって、視線の先に秀平と希美ちゃんが立っていたから。

「秀平…」

私が思わず声を漏らしたのを聞いて、タケルは私に回していた腕をほどく。
そしてゆっくり秀平たちを振り返った。