どうしてタケルは、私を抱きしめてるの?

頭が混乱する。

だって、さっきまで私は秀平と希美ちゃんのことでうろたえてて。
それをタケルが落ち着かせようとしてくれて…。

「タケル…?」

どうしたの?
そう聞こうとしたとき、タケルが先に口を開いた。

「───俺が今まで、どんだけ自分の気持ち抑えてたか分かる?」

どういうこと?
全然分からないよ。

「ずっと…。
秀平なんかと出会うずっと前から、俺はお前が好きだった」

それは、思いもよらない言葉だった。

「え…?」

だけどそれが嘘じゃないのを証明するように、タケルの声は震えてる。

「何度も諦めようとしたけど、駄目だった」

頭がパニックになる。

タケルが私を好き?
いたずらとか冗談じゃなくて?

だってタケルはずっと一番側で、兄弟みたいな存在だったのに…。

「何か、言えよ」

タケルは少し体を離すと私の目を見て言う。

タケルの顔は真剣。
冗談なんかじゃないんだ。

「だって、タケルは…」

「友達だって?
兄弟みたいなもんだって?」

タケルは私の気持ちがまるで読めるようだ。

「そうしてたんだよ。
秀平のことが好きなお前を、困らせたくなかったから」