恋する手のひら

責めたい気持ちと一緒に、私はどうなんだろうという気がしてきた。

早く記憶を取り戻してもらいたいのは、秀平のためじゃなくて自分のためかもしれない。

もし思い出したら、もう一度私を見てくれる可能性があるけど。
今のままじゃ、もう秀平を手に入れるなんて無理だって分かっているから。

秀平とやり直したいから思い出して欲しいと思ってるなら、私だって希美ちゃんと同じくらい自分勝手だ。

「あ、秀平がボール取った」

秀平はさっきのタケルに対抗するように、そのまま強引にボールをゴールにねじ込んだ。

シュートは決まったけど、私の知ってる秀平のプレイとは掛け離れて見えた。

以前の秀平なら、もっと周りを見て、冷静で…。

そこまで考えて、ハッとした。

隣で秀平を見つめながら嬉しそうにしてる希美ちゃんを見て、複雑な気持ちになる。

希美ちゃんは今の秀平を受け入れているのに、私は否定してばっかりだ。

どっちと一緒にいる方が秀平にとって居心地がいいかなんて明白だった。