びっくりして辺りを見回したけど。
周りに誰もいないから、今のは私に話しかけたんだよね。

「ごめん、急に話しかけて驚かせちゃったかな。
早川実果ちゃん、だよね?」

希美ちゃんに名前を知られてることに、さらに驚く。
てっきり、私が一方的に知ってるだけだと思ってたから。

「あなたとタケルくんのことは、秀平からよく聞いてるの」

「───あの、タケルは彼氏とかじゃなくて…」

希美ちゃんにとってはそんなことどうでもいいだろうけど、ちゃんと否定しておきたかった。

「へぇ、違うんだ…」

そうつぶやきながら、秀平に視線を移す希美ちゃんを横目で見た。

やっぱりかわいい。
ふわふわの栗色の髪の毛は自毛かな。
まつげも長くって、人形みたい…。

そのとき、希美ちゃんが私を見た。

まずい。
見とれてたの、バレちゃったかな。

だけど希美ちゃんは嫌な顔一つせず、私に微笑みかけてくれる。

嫉妬してる私が見てもこんなにかわいいんだもん、秀平が好きになるのは当然だ。