「俺ら、廊下で待っとくな」

タケルが言うと、秀平は頷いて準備室に入って行った。

「素直に言えば良かったのに。
元カノと仲良さそうで見てられなかったって」

秀平の姿が見えなくなった後、タケルが言った。

「元カノと仲良くしないで、私だけ見てって」

タケルは意地悪だ。
私にそんなこと言えないって分かってて、そう言うんだから。

「そんな弱気なの、お前らしくないよ」

最近情緒不安定。
こんなこと言われたくらいで、すぐ涙が浮かぶ。
私、一体どうしちゃったんだろう。

そのとき、突然タケルが私の首に手を回した。

「え?」

「いい加減、返すからな」

そう言ってタケルは私にあのネックレスを付けた。

「でも…」

「いらないならお前が捨てろ」

私はトップを握りしめる。

捨てられるわけない。
だってこれは秀平からの初めてのプレゼントなんだから。

「ごめんね、タケル…」

タケルが弱気な私を叱ってくれたのは分かってる。

「ありがと」

私は無理矢理作った笑顔で言った。


このときの私は、自分のことに精一杯で。
準備室の扉の向こうで、先生と話を終えた秀平がそのやりとりを見ていたなんて気付きもしなかったんだ。