───だけど。
私には、好きだと伝えて今の秀平の気持ちを自分に向ける自信も勇気もない。
ただ臆病なだけ。

「───そんな顔すんな」

タケルが私の唐揚げを一つつまんで頬張った。

「あーっ!
好きで残しておいたのに!」

私が膨れると、タケルは代わりにかぼちゃの煮物をくれる。

もうっ。
よりによって、そんな炭水化物の塊なんて、ある意味嫌がらせにも思える。

「俺は知ってるから」

「え…?」

「秀平が目を覚ますまで、お前が毎日見舞いに行ってたことも。
ずっとあいつの手を握ってやってたことも」

どれだけ秀平のことが好きか思い知らされるようで、恥ずかしくなる。

「秀平を支えてたのはお前だって俺は知ってる。
だからそんな顔するな」

何で?
何でタケルは私の気持ちが分かるの?
欲しい言葉をくれるの?

タケルの言葉が嬉しくて、私は思わず声を出して泣いていた。

「おいこら、泣くな!」

タケルは俺が泣かしてるみたいじゃんか、と慌てる。

「泣き止めって」

タケルは私の頭をポンポンと叩きながら、好奇の目を向けてくる周囲に愛想笑いを浮かべてごまかす。

タケルには悪いけど、私の涙は当分の間、止まりそうもなかった。