恋する手のひら

新幹線の到着まで後30分以上あるし、さすがにまだ秀平は来ないよね。

私はベンチにもたれながら胸を落ち着かせる。

たった一ヶ月振りなのに、すごく緊張してる。

緊張しすぎて顔が引き攣ってないかな。
手鏡を見ながらそんなことを考えていると、隣の椅子に座る人がいた。

「まだ到着時刻まで30分はあるぞ」

その声に私は驚いて隣を見た。
一番好きな人の声を、聞き間違えるわけない。

「せっかちなのは俺の方だけど」

隣の椅子に腰掛けた秀平はそう笑った。


一ヶ月振りに見る大好きな人が、変わらない笑顔で私に微笑みかける。

思わず涙腺が緩みそうになるのを、私は必死に堪えた。

「どうしてこんなに早いの?
昨日電話したときは、もっと遅い時間の指定席取ってるって言ってたじゃん」

私がそう聞くと、彼は頭を掻きながら続けた。

「早い時間に空席があるの見つけたら、思わず払い戻してた」

照れながら言う秀平に嬉しくなる。

待ちきれなかったのは私だけじゃなかったんだね。