恋する手のひら

「実果の手が暖かくて心地好くて、早く目を覚ましたいと思ったんだ。
眠ってたときの記憶はそれだけ。
お前のこと忘れてたくせにおかしいよな」

秀平は笑う。

「───お前が側で支えてくれたから俺は目を覚ませた」

彼の言葉に涙が浮かんでくる。

「俺だってお前と離れて平気なわけじゃないよ」

しばらくして、私の手を握りながら秀平がぽつりとつぶやいた。

「俺だって本当はずっと側にいたい」

彼の顔は少し照れ臭そうに見える。

「───私がタケルと寄りを戻しても仕方ないって言ったくせに」

秀平の言葉は嬉しいのに、素直じゃない私はふて腐れながらそんなことを言ってしまう。

「それはすぐに奪い返す自信があるからだよ」

秀平はしれっと言った。

「他の男を見る余裕なんてなくしてやる」

途端に私の頬が赤くなる。

「そう言おうとしたのに、お前が最後まで人の話聞こうとしないから…」