保健室のドアの前で大きく息を吸うと、震える手でドアをノックした。

「どうぞ」

中から聞こえたのはタケルの声。

恐る恐るドアを開けると、ベッドから少し離れたソファーに座っていたタケルが雑誌から目を上げた。

「さっきまで少し起きてたんだけど、またさっき寝たとこ」

タケルの言葉に秀平を見ると、彼はすやすやと寝息を立てていた。
顔の青あざが痛々しい。

「側にいてやりな」

タケルはそう言うと、気を遣って出て行った。

私は秀平の側のパイプ椅子に腰掛け、そっと彼の手を取った。

「大事にならなくて良かった…」

秀平の温もりにホッとする。

もしものことがなくて、本当に良かった。
最後の会話があんな台詞じゃ、後悔してもしきれないよ。