秀平は一時間後、保健室で目を覚ました。

養護教諭に見てもらったところ、運動神経の良い秀平は階段から落ちるときに受け身を取ったため、大きな怪我はなさそうで。
当分、安静にする必要はあるけれど、このまま帰宅して良いとのことだった。

付き添ってくれたタケルからそう聞かされたのに、私は秀平に会いに行くのが怖かった。

もちろん秀平をこんな目に遭わせてしまった負い目もあったけれど、それよりもこの状況がいつかに似ていたから。

───そう、私の誕生日。
あの日秀平は交通事故に遭った。

長い眠りの後、目を覚ました秀平は事故の後遺症で記憶を失っていた。

あのとき秀平が私に向けた、まるで知らない人を見るような冷たい視線が、今も脳裏に焼き付いて離れない。

後にも先にも、あれほど悲しいことはきっとないと言えるくらい、私の中で辛い記憶となって残っている。