恋する手のひら

「距離があったって、必ず駄目になるわけじゃないだろ」

「離れたら、どうなるか分からない!」

私の言葉に秀平は怪訝そうに眉を潜めた。

「どういう意味…?」

「秀平の側にいられないなら、付き合ってる意味なんてない」

いつも側にいて、抱きしめて欲しい。
会いたいときにすぐ会えなきゃ意味ないよ。

「───それって、遠距離になるなら俺と別れるってこと?」

秀平の語調が強まる。

「側にいるタケルを選ぶってこと?」

そんなこと言ってるわけじゃない。
私は、ただ秀平と一緒にいたいだけなのに。


だけど一方で、秀平の言葉は当たっているかもしれない。

実際、さっきタケルが久美子と一緒に楽しそうにしてるのを見るのはせつなかった。
彼に未練があるのは確かだ。

もし秀平と離れ離れになって、まだ私のことを好きだと言ってくれるタケルがずっと側にいてくれたら、私はもしかしたら…。