恋する手のひら

「私は絶対に嫌!」

私は教室を飛び出した。

「実果、待てって」

廊下に出てすぐ秀平に腕を掴まれる。

「離して」

私は必死に彼の手を振り払う。

ここで折れたら、秀平は絶対に私を置いて遠くへ行ってしまう。

「せっかく両思いになれたのに。
これからは、ずっと一緒にいられると思ってたのに…」

秀平を責める言葉しか出てこない。

話の続きを聞きたくなくて、階段の踊り場まで逃げたところで再び秀平に捕まった。

「だから言いそびれてたんだ…。
実果は絶対賛成してくれないと思ったから」

秀平はため息をつきながら言う。

そんなふうに言うのはずるい。
責める私がいけないのは分かってるけど、相談さえしてくれない秀平だってひどいよ。

「秀平は私と離れてても平気なの?」

「それとこれとは別問題だろ?」

秀平は呆れたように言うけど、私には同じことにしか思えない。