恋する手のひら

「───H大学の入学願書…?」

私は眉をひそめる。

H大は関西にある名門大学。
だけど、どうして秀平がそんな大学の願書を持ってるの?

不審に思いながら秀平を見ると、案の定彼は気まずそうな顔で目を逸らす。

「それ…、何?」

私は祈るように、秀平に尋ねた。

「お前まさか、まだ実果に言ってなかったのか?」

秀平よりも先にタケルが口を開いた。

まだ言ってなかったのかって、どういうこと?

「言いそびれてた」

秀平の目が私を見た。

「俺は…」

嫌だ、聞きたくない。

「───H大を受けようと思ってる」

秀平の言葉は現実味がなかった。

だって秀平がH大に行くってことは、私たちが離れ離れになるってことだから。