秀平は何かを言おうとして、ためらっている。

「何?」

私が聞くと、彼は口を開きかけて、でもすぐに首を振った。

「いいや。
何でもない」

そんな風に言われるとすごく気になる。

ちゃんと話してくれなきゃ分からないと私が言うと、

「また今度話す」

秀平はそう笑って私の頭に手を置いた。

「早く風邪治せよ」

何か、うまくごまかされた気分。
私は腑に落ちないながらも、秀平に手を振って彼を見送った。


このとき秀平が何を言いかけたか、もっと追求しておけば良かったのかもしれない。

そうすれば、あんなことは起こらなかったんだから…。