そっか、秀平はそのつもりだったんだもんね。
何もなくてホッとしてるなんて、言ったら怒られそうだから黙っておこう。

「でも、逆に良かったかも」

不意に秀平がつぶやいた。

「え?」

「もし実果とそういうことになってたら、この先受験勉強どころじゃなくなりそうだし」

秀平ってば、真顔でそんなこと言うのはずるい。
私の頭は爆発寸前だよ。

「次の機会に取っておくよ」

それって、もし次に彼の家に行く機会があったら今度こそってこと?

そんなこと言われたら、当分行けそうにないじゃん!

困惑してる私を見て秀平は苦笑した。


「───あのさ、実果。
大学のことなんだけど…」

私の家の前に着くと、秀平は急に真面目な顔で私を見た。

繋いだ彼の手にも、心なしか力がこもってるように感じる。