恋する手のひら

「はよ…」

私の声に目を覚ました秀平があくびしながら言った。

「ごめん秀平。
まさか朝まで寝ちゃうと思ってなくて…」

「熱は?」

秀平は気にする様子もなく、私の額に手をやる。

「もう大丈夫みたい…」

さすがに半日も寝れば、もうすっかりいつも通りに戻ったみたい。

「なら良かった。
シャワー使うだろ?」

汗がびっしょりだったから、ありがたく使わせてもらうことにした。

シャワーを浴びてさっぱりした後、昨日食べそびれたケーキで朝食にする。
甘さを控えたはずなのに、秀平が入れてくれた苦めのコーヒーがちょうど良かった。

「支度したら、家まで送るから」

食器を片付けながら秀平が言う。

本当はもっと側にいたいのに、優しい秀平は「病み上がりだから早く家に帰す」と譲ってくれなかった。