恋する手のひら

じゃあ。
帰り道にこれはカウントされるの?なんて冗談のようにしたキスも。
試合で怪我をしたとき、控室で私に側にいて欲しいと言ったことも。
単なる気まぐれじゃなかったんだ…。


引っ掛かっていた胸のつかえがスッと引いていく。

「あーあ。
こんなこと、言うつもりなかったのにな」

秀平がため息混じりに声を漏らす。

「何で?」

「記憶がなくなってもお前に惹かれてたなんて。
俺ばっかり何度もお前に惚れてるみたいで、悔しいから」

そんなの私も同じ。
ずっと、私ばっかり秀平のことを好きだと思ってた。

何度失恋しても、私ばっかりしつこく秀平に片思いしてると思ってた。

秀平も私と同じだったなんて、おかしいね。
私たち、今まですごく遠回りしてたみたい。

「───とりあえず少し休め」

秀平は私に念を押すように言って、部屋を出て行った。