恋する手のひら

「そんなの後でいいから。
ちょっと来て」

秀平は強引に私を引っ張って歩き出すと、そのまま彼の部屋に私を連れて行く。

扉が閉まって狭い空間の中に二人きりになると、もうこれ以上高鳴ることはないと思ってた心臓の音がさらに激しさを増す。

「実果」

秀平は真剣な顔で私を見て、そっと頬に触れる。

大丈夫、大丈夫。
私は自分に言い聞かせるように、何度も心の中で繰り返す。

秀平のことは好き。大好き。
秀平になら、何をされてもきっと大丈夫…。
そう思った瞬間、

「やっぱりな。
お前、熱あるよ」

彼は私の額に手を当てると、呆れたようにそう言った。

「何かおかしいと思ってたんだよな」

秀平はそう言いながらクローゼットの中からスウェットを出すと、ベッドの上に置く。

「俺のだから大きいけど、その格好よりは楽だろ。
風邪薬持ってくるから、それまでに着替えてろよ」

秀平はテキパキと指示を出すと、私を置いて部屋を出て行てしまった。