恋する手のひら

誕生日に、彼の家で二人きり。

タケルの言うことが本当なら、秀平が誘ったのはそういうつもりみたいだし。
シチュエーションが整えば、やることなんてそれしかないのに、他のことをしようだなんて、まるで誘っているようなものだ。

私は慌てて立ち上がる。

「ケ、ケーキを食べよう!
私切って来る」

誘ったと思われてないよね。
パニックになりながらカウンターキッチンに向かう。

食器棚の中からお皿とナイフやフォークを取り出しながらも、心臓はバクバク言っている。

「実果」

呼ばれてるのに、秀平を直視できない。

どうしよう。
まだ心の準備ができてない。

「ちょっと待って。
今、切るから…」

ナイフで切り分けようとしたとき、秀平にその手を掴まれた。