恋する手のひら

私だってタケルとのツーショット写真はたくさんある。
イベントもずっと一緒に過ごしてきた。

秀平にしてみたら同じなのに、私だけ嫌がるなんてわがままだ。

「貸して」

秀平に言われたけど、私は何でもない、と首を振ってごまかす。

あんな写真で嫉妬してるなんて知られたくないし。
何より、せっかく誕生日に二人きりでいるのに、秀平に希美ちゃんのことを思い出させたくない。

希美ちゃんとのことが過去だと頭では分かっているけど、私はそんなに心が広くない。
私の知らない秀平を知ってる彼女に、ほんの少しでも、今のこの時間を邪魔されたくない。

「写真はもういいから、何か他のことしようよ」

私が秀平の気を逸らそうとして言うと、

「他のこと…?」

秀平がぽつりとつぶやく。
その瞬間、私は自分の言ったことの意味に気付いて顔が真っ赤になった。