「おじゃまします」

私の心拍は、どんどん早まっていく。

秀平の家に上がるのは実は初めてだったりする。
そのうち、タケルの家みたいに緊張しなくなるのかな。

「適当に座って」

リビングに通された後、秀平に促されてソファーに腰を下ろす。

「親父たち、朝から急いで親戚の結婚式に行ったから部屋片付いてないだろ」

それで今日は秀平が一人で留守番なんだ、と内心納得する。

そんなに言うほど散らかってないけどな。
キョロキョロ辺りを見回してると、コーヒーカップを二つ抱えた秀平がやって来た。

私は慌てて持って来たケーキを渡す。

「ケーキ焼いたの」

砂糖控えめだから、と言うと、秀平はサンキュ、と笑って受け取った。

「いい匂い。
後で食お」

「ねぇ、本当にプレゼントなくていいの?」

「いいよ、実果がいれば」

秀平はそんなセリフをしれっと言って、コーヒーに口を付けた。