今度は俺がきょとんとする番だった。

「…え?」

間抜けな声で聞き返してしまう。

「だって、一晩中一緒にいられるってことでしょ?
もちろん行きたい」

実果はもう一度言った。

それってつまり、そういう意味だよな?
俺は自分に問う。

嬉しい反面、あまりあっさりOKされたものだから不信感が募る。

奥手に見えて、実はタケルとはもうとっくに…?
そんな面白くない疑惑が頭をよぎったとき。

「前にタケルとやったゲームで、面白いのがあったの。
貸してもらえるか聞いてみる」

そう言って実果は携帯電話をいじり出した。

ちょっと待て、そういうことか。

次第に笑いが込み上げてくる。
やっぱり実果は実果だ。

「どうかした?」

人の気も知らずに、実果は笑いを堪える俺を不思議そうに見てる。

「いや、何でもない」

まぁ、焦らなくてもいいか。
俺は目の前の無邪気な彼女を見てそう思った。