恋する手のひら

私は慌ててポケットから携帯電話を取り出すと、

「これ、私にくれたんだよね」

ストラップにしたネックレスのトップを見せながら恐る恐る聞いた。

「実果が欲しがったんだろ。
他の誰に買うかよ」

秀平は苦笑する。

「ありがと…」

ようやくスッキリした気がした。

秀平から渡されたわけじゃないのに自分のものにしてたことが、ずっと心の中で引っ掛かっていたから。

事故を起こす前、タケルの部屋での何気ない会話を覚えていてくれたのが嬉しくて、私は秀平の病室で泣いちゃったっけ。

あのあと秀平は全ての記憶を失って、やがて希美ちゃんと寄りを戻してしまい。
私はタケルと付き合うことになったから、ネックレスは出来なくなってしまった。

だけど、どうしてもいつも側に置いておきたくて、ストラップにしたんだよ。