恋する手のひら

「かわいいってほめられた、くらいに思ってればいいんじゃないの?」

その都合のいい考え方に、笑ってる場合じゃないはずなのに、思わず笑ってしまう。

秀平の言葉は不思議。
さっきまでの不安な気持ちがゆっくり和らいでいく。

「ありがと」

私は秀平の手を握り返しながらつぶやく。

暖かくて、優しい手。
秀平が側にいてくれれば大丈夫、心からそう思える。

「またタケルの話になっちゃったね」

私がからかうように言うと、

「もういいや、諦めた。
長期戦でいくよ」

秀平がそう言ってため息をつくもんだから、私また笑ってしまった。

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「そう言えば、もうすぐ秀平の誕生日だね」

私が言うと、パスタをフォークに巻き付かせていた秀平が顔を上げた。

文化祭初日にして行列が出来たパスタ屋で、私はカルボナーラを、秀平はナポリタンを注文した。

「そういや、そうだな。
すっかり忘れてたけど」

秀平はそうつぶやくと、パスタにピーマンとソーセージを添えて口に放り込んだ。