恋する手のひら

不意に名前を呼ばれて振り返ろうとした瞬間、

「あぁ、二股してすぐに今彼に乗り換えたって子でしょ」

背中が凍りついた。

「元カレ、可哀相ー」

体が強張って動かない。
聞きたくないのに、二人の言葉が耳から離れない。

「かわいい顔して結構やるよね」

聞こえよがしに言って二人は去っていく。

そっか。
私たちは、周りからそういう風に見られてるんだ。

もしかしたら周りだけじゃなくと、タケルも本心では私のこと呆れてるんじゃないかと思わずにいられない。

そのとき、秀平が私の手をギュッと握り締めた。

「外野の言うことなんか気にすんな」

私は秀平の顔を見上げる。

「無関係な奴には言わしときゃいいよ。
タケルは納得してんだから」

「うん…」

そうだよね。
私が信じるべきは、さっきの女の子たちの言葉じゃなくてタケルだ。

怒ってないと言ってくれたタケルを信じていればいいんだよね。