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長期の入院生活で体力が落ちていることもあり、激しい運動は控えるように言われていたから、秀平は退院後はしばらく帰宅部になっていた。

たまたま、今日は私の所属するテニス部も顧問不在で休みだったため、タケルを残して秀平と二人で帰ることになった。

二人きりの帰り道は久しぶりで、すごく緊張する。

何を話そう。
希美ちゃんに会ってどうだった?
また惹かれたりしてない?

聞きたいことは山ほどあるのに、聞けずに頭の中をぐるぐる駆け巡ってる。

沈黙を破ったのは、秀平だった。

「お前って、付き合ってるやつとかいないの?」

「えっ?」

急に聞かれて驚いた。
何でそんなこと聞くの?
もしかして、少しは私のことを気にかけて───。

「いるなら、俺の役に立ちたいとか、構わないでいいから」

舞い上がりそうになった気持ちが、一瞬にして現実に引き戻される。

休み時間に渡したクラスの表。
やっぱり、あれがまだひっかかってたんだ。

困ってる人の役に立ちたいなんて、恩着せがましいこと言ったから、秀平は迷惑だったのかもしれない。

それなのに、秀平も私のことを、なんて期待しちゃった私は、どれだけ自意識過剰なんだろう。

「───そんなのいるわけないじゃん」

迷った末に、そうつぶやいた。

本当なら、あの日私たちは付き合ったんだと思う。
ようやく秀平の彼女になれるはずだった。
だけど結局、それは夢で終わってしまった。

「私は半永久的な片思いだもん…」

なんて自嘲気味に笑う私に、

「───そんなことないだろ」

秀平は真剣な顔で言った。