恋する手のひら

「タケルは私たちが引き取るから、実果は秀平くんと楽しんでおいで」

久美子はそう言うと、タケルの腕をガッと掴み、沙耶と共に去って行った。

何だよ、離せよ、と遠くで響くタケルの叫び声に笑ってしまった。

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「───で?
タケルが友達にもモテるって知ったら、急に惜しくなった?」

「違うよ!」

秀平に言われて私は頬を膨らませる。

そんな言い方するなんて、秀平は意地悪。
惜しくなったとか、そんなんじゃないもん。

だけど、動揺しているのは確かだ。

「あいつがモテるのは今始まった話じゃないけどな」

秀平がぽつりとつぶやく。

「あいつ部活の後とか、よく女子に呼び出されてたし。
今年の春合宿でもマネージャーに迫られてたっけ」

バスケ部のマネージャーは後輩で、うちの学年でもかわいいと評判の子。
そんな子にも好かれてたなんて、さすがにびっくり。

「去年のバレンタインデーのチョコレートの数はついに100個を超えて…」

「嘘っ!」

驚いた私を横目に、秀平は舌を出して、嘘、とつぶやいた。