「元…彼女?」

秀平はちょっとびっくりしたように私と彼女を見比べる。

大塚希美ちゃん。

私が知っているのは、秀平の元彼女ってことだけで。
どうして二人が別れたのかは知らない。

希美ちゃんは、扉の外に立ってるだけでクラスの男子が一斉に注目するくらい、かわいい。

スタイルもいいし、小顔だし。
性格もいいから非の打ち所がないってA組の友達が言ってたな。

「何だろう…」

そう首を傾げながら希美ちゃんの元へ向かった秀平を見ていると、引き留めたくてたまらなくなる。

だって。
もし以前好きになった相手と記憶を失ってからもう一度出会ったとしたら、また好きになってもおかしくないんじゃない?

『もしかして、俺らって付き合ってた?』

そう聞かれたときに頷いていたら、秀平はどうしてたかな。

私をもう一度好きになってくれるように努力してくれた?
今、希美ちゃんのとこには行かないでくれた?

そんなずるいことを考えたとき、

「───何考えてるか、当ててやろうか」

突然タケルに声をかけられて、やましい気持ちがあるせいか、飛び上がりそうな程びっくりした。
だけど。

「秀平ってば、私にキスしたくせに元カノと寄りを戻そうなんて不潔よ」

オネエ口調になるもんだから、笑える気分じゃないのに思わず吹き出しちゃった。