「ごめん…」

私が謝ると秀平は言った。

「そんなにタケルが気になるなら、やっぱり俺たちは付き合わない方がいいかもしれないな」

私は驚いて秀平の顔を見る。

そんなの嫌だ。
タケルを傷付けても、私は秀平の側にいることを選んだんだから。

私の顔が真剣だったのを見て、秀平はプッと吹き出した。

「冗談だよ」

私はホッと胸を撫で下ろす。
いつも冗談なんて言わないから、心臓に悪いよ。

「ごめん、意地悪だった」

秀平は私の頭を軽く叩くと、私の手を握った。

高校を出てだいぶ歩いたから、そろそろ周りの目を気にしなくてもいい頃。
用意周到な秀平のことだから、あえてここまで手を繋がなかったのかもしれない。

周りにタケルの彼女だと思われてる私が、秀平にも手を出す二股女だと非難されないように。

「大丈夫だよ。
そのうち、あいつだって許してくれるから」

秀平の言葉に頷きながらも不安は消えない。

いつになったら許してくれる?
またあの笑顔を見せてくれる?

「ずっとこのままなんて、あいつが耐えられるわけないだろ」

私は頷いたけど、このままじゃ耐えられないのはきっと私の方だ。