帰り道。
隣には秀平がいるのに、頭の中はタケルのことでいっぱいだった。


あんなに優しかったタケルを傷付けた。
タケルの去り際の言葉が頭から離れない。

『俺一人で、バカみたいだ…』

タケルはどんな気持ちでそうつぶやいたんだろう。

あんなところを見られたら、私と秀平が陰でこそこそ会ってタケルを裏切ってたと思われても仕方ない。

だけと、もし今まで一緒に過ごしたときの私の気持ちまで疑われていたらと思うとやりきれない。

だって、タケルと一緒にいたときの気持ちに偽りはなかった。
暖かくて穏やかなタケルといられて幸せだった。

だけど、私はそれさえ伝えないで彼を傷付けてしまったんだ。


隣で秀平が溜め息をついて我に返る。

せっかく秀平と両思いになれたのに、タケルのことばかり考えている自分に呆れた。