恋する手のひら

「テントなんてあったっけ?」

グラウンドの倉庫には、体育の授業のときに何度か入ったことはあったけど、テントなんて見覚えがない。
秀平も首を傾げてる。

そう言えば、今なら聞けるかな。
私は並んで歩く秀平の顔を見て、恐る恐る口を開いた。

「ねぇ秀平…。
K大の推薦断ったって、本当?」

その瞬間、秀平の表情が固まるのを見れば、答えを聞くまでもなかった。

「どうしてそれ…」

「林原先生が口を滑らせたの。
佐々本先生には聞かなかったことにしてって言われたんだけど…」

そんなことできっこない。

「秀平だって、バスケ続けたいって言ってたよね?」

推薦の話が嬉しかったのはタケルだけじゃないはずだ。

「もしかして、タケルに譲っ…」

「あいつと違って、あのとき俺は迷ってたから。
そんな奴が推薦を受けるべきじゃないだろ?」

秀平の口調が少しきつい。
この話題を終わらせたがってるのが分かった。