恋する手のひら

「内緒…」

そう答えながら、ちらっと秀平を見る。

どうして推薦を辞退なんてしたの?
そこまで建築がやりたかったの?
…まさか本当に、タケルに譲ったんじゃないよね?

聞きたいことはたくさんあるのに、口に出せなくてどんどんフラストレーションが溜まっていく。

そんなとき、廊下から隣のクラスの女の子が顔を出した。

「ちょっと坂本くん。
文化祭の委員、集合かかってるよ」

「マジかよ。
集まりなんかあったっけ?」

来月に迫った文化祭。
うちのクラスでは、いち早く進路の決まったタケルが満場一致で委員にさせられていた。

「この後、佐々ちゃんに呼び出されてんだよな…」

タケルは困ったように頭を掻く。

「代わりに行ってやろうか?」

秀平の言葉にタケルの顔が輝く。
相変わらず憎めないやつ。

「助かったー。
恩に着ます」

調子いいタケルの様子に秀平は苦笑してる。

こんな二人を見るのは久しぶりかも。

秀平に振られた傷はまだ完全には癒えていないけれど、こんな風にまた三人でいられるようになれて良かったと心から思う。