「大学で建築を専攻しようと思ってるんだ」

そう言うと、急に不安そうな顔になった実果に地元の大学かと聞かれた。
今のところ第一志望は都内にある叔父の母校。
家から通うつもりだったので頷くと、

「タケルもK大なら家から通えるし、みんなバラバラにならなくて済むね」

実果は目に見えて安堵する。

「受験が終わったら、建築物めぐりを兼ねて、どこか旅行に行くのもいいね」

以前の三人に戻りたいという、彼女の本音が聞こえてくるようだった。

俺は肯定も否定もしなかったけど、そんな日はきっともう来ないと分かっていた。
タケルと実果が付き合っている以上、もう以前のままではいられない。
二人が仲良くしている姿を側で見せつけられるのは、さすがに耐えられそうにないから。


帰り道、彼女を家まで送っていく。
偶然会ったんだ、これくらいしても許されるだろう。

実果の隣はやっぱり心地好い。

無意識のうちに実果の歩調に合わせてしまう自分がいじらしく思える。

我ながら、未練がましいよな。
だけど現実は薄情なもので、もう少し一緒にいたいと思った矢先に彼女の家に着いてしまった。