「推薦を辞退したい?」

俺の突拍子もない発言に、顧問の佐々本が目を白黒させた。

それもそのはずだ。
バスケをやってる奴にとって、飛び付きたくなるような話を断るんだから。


インターハイの準々決勝の前日。
俺は佐々本に会いに数学準備室を訪ねて、K大推薦の選考から外してもらいたい意思を伝えた。

「すみません」

俺は頭を下げる。
場合によっては佐々本の顔さえ潰しかねない発言なのだから。

「いや、でも何でだ?
お前だって、大学でもバスケを続けたがってただろ。
最高の条件だぞ」

佐々本は理解ができないと言うように首を振る。
当然だよな。
俺だって、この決断がどれだけ勿体ないことかは分かっている。

だけどこの推薦の話は、もう俺たちにとっては単なる進学の問題ではなくなっていた。

「…他にやりたいことがあって。
言いそびれていて、すみません」

口からすらすらと嘘が出る自分に、詐欺師かと突っ込みたくなる。