「───ずっとお前の気持ちには気付いてたし、タケルの気持ちも分かってた。
俺もお前に惹かれたから希美と別れたけど、タケルと三人の関係を崩したくなくて、答えを出すのを避けてた」

秀平がこんなふうに自分の気持ちを話すのは初めて。
素っ気ない顔をしたその裏で、ちゃんと私のことを考えていてくれたんだ。

「一度はお前と付き合おうと決心したけど、事故って記憶をなくすし。
思い出したときには、お前はタケルと付き合ってるし。
ここまでくると、相性が悪いとしか思えないよな」

秀平は苦笑しながら続ける。

「もっと早くお前と付き合ってれば良かった。
たとえお前がタケルと付き合っていても、奪い返せば良かった。
───だけど、俺にはそれが出来なかった」

付き合おうとしてくれたってことは、タケルから奪い返そうとしたってことは、私のこと好きだったってことだよね。

「俺は、お前との今の関係性を変えるのが怖い。
口下手だし不器用だし、付き合ったらきっと愛想をつかされるのが分かってるから。
俺には実果とやっていく自信がない。
駄目になるくらいなら、今のままでいたい」

私は秀平を好きで、秀平も私を好きで。
それでも駄目なんだね。