「「今…!」」

私とタケルは顔を見合わせる。

秀平の指先がピクンと動いて、次第に力が入っていくのが分かる。
そしてゆっくりとまぶたを開いた。

まだ焦点が合っていないのか、秀平は辺りを見回した後、私たちを怪訝そうに見る。

「ここは…?」

秀平がかすれた声でそう問うと、タケルは即座に、事故に遭って病院に運ばれたことを伝えた。

「お前、一ヶ月以上眠りっぱなしだったんだぞ」

タケルの言葉に、

「一ヶ月…?」

秀平はぽつりとつぶやく。

そのときなぜか、私は違和感を覚えた。
秀平の表情がどこか、以前と違う気がしたから。

長い眠りから覚めた途端、事故に遭ったと聞かされたら気が動転しても無理ない。

いつも冷静沈着な秀平とはいえ、こんなときに落ち着いてられないと思う。

だけど。
いつも秀平が私たちを見る目はもっと…。

「───なぁ」

次に秀平が口を開いたとき、その嫌な予感は的中した。

「お前ら、誰?」

秀平は以前と何ら変わらない顔で、声で。
以前からは考えられない言葉を口にしたんだ。