恋する手のひら

うわぁ。
じわじわと熱くなる頬を両手で覆う。

ずっと憧れてた人に言われると照れる。
もう恋愛感情なんてないはずなのに、初恋の人ってやっぱり特別かも。

「からかいがいがあるのも相変わらずだけど」

サトシくんは私を見てククッと笑った。

何だ、からかっただけか。
サトシくんの方こそ、相変わらずじゃない。

タケルとつるんでたから昔からサトシくんには完全に妹扱いされてたっけ。
それはそれで嫌じゃなかったけどね。

「なんて嘘。
本当にきれいになったよ。
そりゃタケルが惚れるのも分かる」

私は驚いてサトシくんを見た。
サトシくんまでタケルの気持ち知ってたの?

「その様子だと、ようやく告られたんだ」

私は助手席でこくんと頷く。

「───付き合ってるの?」

痛いところをつかれて返答を躊躇っていると、サトシくんは全てを見透かしたように続けた。

「あんだけ一途なやつ、今どき天然記念物もんだよ」

分かってる。
タケルがどれだけ私を思ってくれてたのか。
もう耳が痛いくらいに周りから聞かされたよ。

「ちょっと頑固だけど、いいやつだから。
もう一度よく考えてやって」

サトシくんは俺って兄バカだよな、と笑う。

ううん。
タケルがいいやつなのは私が一番良く知ってる。

そんな彼を振り回して、私は一体何をしてるんだろう。