恋する手のひら

翌朝、車のクラクションの音に私は二階の窓から顔を出した。

「よ、元気か?」

サトシくんは車の外に出ると、私に手を振った。

「久しぶり!
元気だった?」

私が急いで階段を駆け下りて玄関を出ると、サトシくんは笑う。

「何だよ、聞いてた話と随分違うな。
めちゃくちゃ元気そうじゃん」

確かに、昨日倒れたってのに自分でも信じられない回復力。

サトシくんが助手席のドアを開いてどうぞ、と招く仕草に、免疫のない私は少し緊張しながら乗り込んだ。

「本当に久しぶりだな。
就職して家出て以来だから…、もう四年振りになるか?」

車を発進させてから、サトシくんが口を開いた。

「うん」

夏休みやお正月は帰省してるらしいけど、私はめったに会わないからな。

「この前まで中坊だったと思ってたのに、実果ももう女子高生か」

「来年は大学生だよ」

子供扱いされるのが嫌で反論すると、サトシくんは運転を妨げない程度に私を見て、

「うん、きれいになった」

私の頭をポンと叩いた。