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「やっぱり熱あると思ったんだよな。
だから無理すんなって言ったのに」

帰り道、タケルは私の手を繋いでゆっくりと歩きながら言った。
タケルはちゃんと体調を気遣ってくれてたのに、私が無理したせいで迷惑をかけちゃった。

「ごめんね」

「危なっかしいから当分一人で外出禁止な。
明日は兄貴に車で送らせるよ」

明日、という発言にホッとする。
試合に勝ったんだ。

「サトシくん、帰ってきてるの?」

サトシくんはタケルの6歳上のお兄ちゃんで、数年前に就職と同時に実家を出たはず。

「大手企業の夏休みは長いんだって、毎日実家でゴロゴロしてんだ」

「サトシくんに会うの、久しぶりだ。
少し緊張するな」

サトシくんはタケルを少しシュッとさせた感じの好青年。
小さい頃にちょっと憧れてたのはタケルには内緒、なんて思っていた矢先。

「初恋の相手だもんな」

タケルに言われて私は驚いて彼の顔を見る。

「何で知ってるの?!」

「何を今さら…。
お前のことなら、だいたい何でも知ってるよ。
俺の初恋は実果だもん」

驚いたのと照れ臭いのとで、思わずタケルから目を逸らしてしまう。