目を覚ますと、私は狭い個室のソファーベッドに寝かされていた。
きっとあの後、倒れて運ばれたんだ。

横を見ると、私の手を握りしめたタケルが隣の椅子に腰掛けながら、すやすやと寝息を立てている。

寝顔は子供の頃からちっとも変わらないな、なんて思わず微笑んだとき、彼のもう一方の手に握られていた携帯電話を視界に入って胸がチクンと痛んだ。

気を失う前に秀平を見た気がしたのは、やっぱり気のせいだよね。
意識が朦朧としていたとは言え、タケルを秀平に見間違えてしまったなんて我ながらなんて未練がましいのだろう。

秀平にもらったネックレスを加工したこのストラップだって、いい加減外さなきゃいけないって分かっているのに。

手にしてるってことは、タケルも見たよね。
きっと嫌な気持ちにさせちゃったね。

「タケル」

私は彼の肩を軽く叩いて起こす。

彼はゆっくりと体を起こして大きな欠伸をしたかと思うと、ハッとした様子で私の顔を見た。

「実果、大丈夫?」

私は頷く。
さっきまでの怠さもないし、ふらつきもない。

時計を見ると、試合が終わってから二時間以上経っている。
これだけ寝ればさすがに回復したみたい。

「ごめんね、タケルの方が疲れてるのに」

タケルはホッとしたように大きく息を吐くと、笑って首を振った。