「だけど、たとえ俺と付き合ってたからって、記憶が戻ったことも伝えずに、あっさり身を引こうとしたお前をそう簡単に信用する気にはなれない」

そうだよな。
タケルが実果をどれだけ大事にしてるのが分かってる分、タケルが俺にどれだけ失望してるかも分かっていた。

「───本気で俺と勝負してみろよ」

タケルがぽつりとつぶやいた。

「佐々ちゃんから言われただろ、K大推薦の話」

インターハイが始まる前、俺とタケルは顧問の佐々本に職員室に呼び出された。

彼が言うには、インターハイで成績を残せば、大学に推薦で行けるというのだ。

本来なら、俺らのような毎年県大会止まりの高校は論外のはず。

ただ、レベルの高かった去年のキャプテンが県大会で活躍したため地元では割と注目されていた。

そんな中、運良く全国へ行けたからそんな話が来たんだろう。

K大は名門で、バスケをやってるやつなら願ってもないチャンスだった。

「推薦の枠は一つ。
俺かお前のどちらかしか選ばれない」

「───勝った方が実果と付き合うって言いたいのか?」

俺が目を丸くして聞くとタケルは頷いた。

「第三者が勝敗を決めるんだ、公平だろ。
お前が勝ったら、今までのことも全部許してお前に実果を返してやる。
その代わり俺が勝ったら、今度こそ俺がもらう。
そのときはお前への未練が残らないくらい実果をきっぱり振ってくれ」